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2024年5月12日

第35回研究会の報告

第35回イングランド啓蒙研究会

2024/05/11 中央大学文学部3号館 哲学共同研究室


報告者  内坂翼(国際基督教大学)、青木滋之(中央大学)


 6/1,2に本研究会が主催となって開催する予定の、ピーター・アンスティ教授(シドニー大学)を招いたワークショップの打ち合わせを行った。同教授の共著 Experimental Philosophy and the Origins of Empiricism (Cambridge UP, 2023) と、同教授が編纂した The Oxford Handbook of British Philosophy in the Seventeenth Century (Oxford UP, 2013) の内容検討、紹介を行った。

 Experimental Philosophy and the Origins of Empiricism は、哲学史で言われる「イギリス経験論」は、カント以降の歴史記述が後付けで生み出したものであり、実際の歴史現象としては実験哲学の興隆や衰退が実体としてあった、と主張する。報告者はこの枠組み、大枠の主張に賛同するものであるが、他方で、思弁哲学/実験哲学の区分(ESD, Experimental / Speculative Distinction)以外の、経験や観察といった概念との比較も重要でないかと指摘した。また、標準的な歴史記述である合理主義/経験主義の区分(RED, Rational / Empirical Distinction)と、本書が提唱するESDという2つの区分の両方を理解することで、「イギリス経験論の父」がベーコンなのか、それともロックなのかという、二次文献に見られる混乱が整理できるのではないか、という見通しを述べた。

 The Oxford Handbook of British Philosophy in the Seventeenth Century からは、アンスティ教授が執筆した "John Locke on the understanding" が取り上げられた。報告者が指摘するように、ロックの言う知性とは一体何のことであるのか、これまで先行研究ではほとんど突っ込んだ研究が行われてこなかった。それに対し、この章では、知性と意志、知性と心、知性の機能、知性の導き方、といった様々な側面からロックの知性を論じており、今後ロックの知性を論じる上での標準的な参照軸になるのではないか、と報告者は評した。

 

 

 

 

  また、今回の研究会は、6/1,6/2のプログラムについての打ち合わせも含まれていたが、Day 2の発表者の順番を入れ替える以外には、大きな変更点は必要ないことが確認された。