2019年10月22日

第10回研究会の報告

第10回イングランド啓蒙研究会

2019/10/19 愛知学院大学名城公園キャンパス

 今回の研究会の第一報告(小城)ではジョージ・クロスコの近著 George Klosko, Why should We Obey the Law? (Polity, 2019) の内容紹介とその検討が行われた。本書の中でクロスコは政治的責務論、すなわち国家への服従義務の正当化の問題を考察している。この問題に対してクロスコは、フェアプレイ原理と相互援助義務を組み合わせた複合原理理論を提出している。本報告ではこの複合原理理論が特別性要件を満たしていないので、政治的責務論としては成功していないのではないかとの見解が示された。



 第二報告(青木)では、ロックの『人間知性論』がアイルランドでどのように受け入れられたのか、トーランドによるロック知識論の継承・断絶が検討された。最後には、イングランドとアイルランドにおける『人間知性論』の受容のされ方の違いは、当時の大学教育の違いに起因したのではないかと指摘された。

 第三報告(武井)では、トーランドの聖書解釈が取り上げられた。具体的には、トーランドがロックの道具立てを用いて聖書をどのように読んだのかを詳らかにした上で、理神論が無神論に至らないことを主張したことが明らかにされた。