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2020年11月11日

第15回研究会の報告

  

第15回イングランド啓蒙研究会 

2020/10/18 オンライン

報告: 瀧田寧「ロック『知性の正しい導き方』における哲学教育的意義 教養としての哲学教育の現場から」

 『知性の正しい導き方』は、ジョン・ロックが自身の哲学上の主著『人間知性論』第四版(1700年)に新たな一つの章として付け加える予定でありながら、結局完成させることができず、ロックの死後、『ジョン・ロック氏遺稿集』(1706年)に収められたものである。単行本としては1741年に出版され、日本語訳は1999年に下川潔氏によるものが御茶の水書房から、2015年には同氏による改訳版がちくま学芸文庫から出た。

 本報告ではまず、発表者が所属する日本大学商学部の図書館が発行する学内誌に寄稿した本書(ちくま学芸文庫版の翻訳)の紹介文を取り上げた。学内誌の編集委員会から依頼されたテーマは、「コロナ禍との関連で読むべき本」であったが、それに続けて「苦難の中で力や知恵、生きる上でのヒントを与えてくれる本」とあったので、紹介文では特に後者のテーマを意識して、本書の第二八節「練習」と第三九節「意気阻喪」を取り上げた。この二つの節の紹介で発表者が強調したかったのは、どのような時でも、まずは自分自身の力量を知ること、そして自分に最もはっきりと捉えられるものから着手して知性の働きを漸進的に進めていくこと、という、まさに「哲学する」うえでの基本的な態度である。

 本報告ではこれに続けて、実際に商学部生を対象とする教養科目としての哲学の授業で、本書をどのように活用しているのかを紹介した。

 教養科目なので、ロックだけを扱うわけにはいかず、時間が限られている。そのため、例えば専門科目でロックの哲学を取り上げる際にはある程度時間をかけて説明する「観念」の説明も、省かざるを得ない。そのような条件のもとでは、『人間知性論』を取り上げることは難しい。けれども、『知性の正しい導き方』ならば、例えば<読書>のような誰にとっても身近な場面での知性の導き方が説かれているので、「観念」の説明を抜きにしても、ロックの経験論の意義を十分に伝えられる。

 本報告では、実際に授業で使用している配布プリントに沿って、学生に理解してもらいたいポイントを説明しながら、プリントに掲載した『知性の正しい導き方』からの引用部分を学生自身の経験に置き換えて理解させる試みを紹介した。



Cf. John Locke, Of the Conduct of the Understanding. Edited with General Introduction, Historical and Philosophical Notes and Critical Apparatus by Paul Schuurman (Doctoral dissertation, defended 10 April 2000, University of Keele, Department of Philosophy).